前々から読もうと思っていた東野圭吾の作品、ようやく読めました。
作品は『容疑者Xの献身』です。映画にもなった作品なのですが、物理学者である湯川に少なからず魅かれたこともあったため、以前から気になっていた作品です。
ちなみにドラマは見ていましたが、映画は見ていません。
以下、多分のネタばれがあります。
率直な感想を書くと、トリックがとても稚拙で残念でした。
ガリレオシリーズの専売特許である物理トリックがあるわけでもなく、犯人の天才数学者石神の天才ぶりを書きたかったのでしょうが、いろいろ疑問が出てくるんですよね・・・。
- 遺体をすり替えたのはいいとして、遺体と『富樫』をどのように結びつけたのか?
内容を読む限り、殺害現場に放置された自転車に残った指紋が、富樫の泊っていた安宿の指紋と一致したってだけで、富樫と結び付けています。決して富樫の指紋と結びついていないのです。こんな弱い証拠で警察が判断するのでしょうか?
- DNA鑑定をすれば、遺体が富樫ではないとわかったはず
遺体の正体はホームレスなので、身元の判断がつかず、DNA鑑定が難しいって解釈もありますが、顔をつぶされ指紋を焼かれた遺体です、どう考えても怪しいですし、普通の警察なら調べるでしょう・・・。
- 富樫殺害の証言はもっとあるはずでは?
富樫を殺害したのは花岡という女性なのですが、何の変哲もないアパートの一室で殺されています。石神は隣に住んでおり、当時のもの音から異常を察知したわけですが、アパートは2階である以上、1階にもそれなりのもの音がしたと思われます。しかも殺害時刻は19時・・・。もっと証言があってもいいのでは・・・。
まあ、作者としてはいろいろ描きたいものがあったのでしょうが、なんとなく、残念な感じの作品でした。
個人的に物理よりも数学が好きなので、どんなトリックなのか気になっていたのですが、とっても残念です。
でも、湯川先生にはさらに魅かれましたね。およそ近寄りがたい性格なのですが、今作品では彼の心の葛藤が見てとれました。人生を通じての好敵手を、愛などという湯川の中では『つまらないこと』で失うなど、思ってもみなかった。しかも追い詰めたのは自分自身であり、感情をあらわにすることの少なかったガリレオも今回だけは堪えたようでした。
それにしても、大学時代にこんな教授がいれば、少しは変わっていたかも・・・と思ってしまいます。
keroです。この作品は同短編シリーズと違いトリックより、心情の葛藤に主眼を置いてるからね。
ガリレオ先生がみとめる彼がよもや、感情に突き動かされて行動するなんて。。。という、人間の感情のもつ論理では説明出来ない部分を 描きたかったんでしょうなぁ。 だから 作品のクライマックスは、トリックときではなく、そこまで何でやるんだ?という、真犯人の 行動と、心情だ。 ガリレオ先生シリーズで初の長編であるこれは、ガリレオ先生は脇役。主役は犯人だ。ガリレオ先生による犯人の心情の代弁のシーンとなる解決シーンでは、涙なしではよめなかったな。題名にある、献身とはなんだろう?
涙なんか流しませんでした。ただただ残念な内容って感じでした。まあ、あそこまでした犯人が、靖子の自白により泣き崩れるのはさすがに同情しましたが・・・。『あそこまでした』ってのが献身なんでしょうねきっと。