ノーベル物理学賞は小林益川理論!

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取りましたね。3人とも日本人、しかもかつて私が専攻していた素粒子理論からということで、他人事とは思えないほどうれしいです。
物理学での受賞者と言えば、小柴さんが最近ですが、あの人は素粒子実験なので、私の専攻とは、分野が違っていましたし、当時はまだ学部生だったため。「へーー」って感じでした。
だけど、今回はその源論文もかつて読みましたし、数年前釈迦力になって勉強していた分野なのでなおさらうれしい。


私の生まれる前のことなので、間違いもありますが、当時は実験と理論の立場が今とは逆転していて、実験が先行していました。理論はそれに対して理論的体系を作ることを迫られていた時代です。
当時ようやく素粒子の標準模型が出来上がるころでした。標準模型とは・・・なんてことは書きませんが、この世のすべての力学を模型で記そうみたいな試みで、自然界の4つの力(力学・電磁気学・弱い相互作用・強い相互作用)のそれぞれの模型がようやくできたころでした。
そんな中、実験的事実として、CP対称性の破れが導き出され、標準模型で許容できない事実に理論物理学者は頭を悩ませ、またその解決を迫られていました。
小林益川理論は、そんな時代に画期的ものとして誕生しました。未知のクォークの予言と、CP対称性の破れの理論的裏づけがこの理論の肝ですが、CP対称性の破れの理論的裏づけのほうが大きな功績だと思います。未知のクォークは遅かれ早かれ見つかったと思います。また、フェルミオン(レプトン・クォーク)に世代(flavor)という概念が導入されました。
今後マスコミ等が、いろいろな場面でCP対称性の破れを解説していくでしょうが、あまりにも難しいことなので、触れません。ちなみにT対称性なんてのもあります(時間のT)。とにかく素粒子理論においてはあってはならない、想定外の事実でした。
それと向き合うことで、アノマリ(異常)を解消(許容)し、その副産物として、未知のクォークを予言したこの理論は、学生当時すごいな・・・って思いました。なによりも、理論的見地からありえないものを解消してしまうあたり、発想の柔軟性というか粘り強さというか、こんな研究できたらいいなって正直思いました。
この理論で一つの3行3列の行列が導き出されますが、「CKM行列」という名がついています(C:カビボ、K:小林、M:益川)、いずれも関係者の頭文字をとっています。当初カビボという人が、2行2列の行列を発見し、後に小林・益川両氏により発展的に生まれました。「小林益川行列」なんて呼ばれたりします。行列に名前がつくなんてホントにすごいです。アインシュタインの宇宙項に似ています。
現在では、理論と実験の立場は完全に逆転し、実験的検証を今かと待ち構えている理論(ノーベル賞候補)が山のように出来上がっています。Higgs粒子、GUT(10)モデル、超対称性(SUSY)、弦理論(StringTheory)、超弦理論、メンブレン・・・あげればきりがありません。中には理想(こうあるべき・・・みたいな)を追い求めただけにすぎず、哲学としか言えないものまで、様々な理論体系が研究され実証を待っています。
私は、そのよりどころのなさに嫌気がさし、その道を捨てました。そんな「日の目を見るか分からない」もの、「正しいかどうかもわからない」ものに人生を費やすことはできなかったのです。そう考えると、当時は良かっただろうな・・・って思ってしまいます。
一瞬でも、その霞がかった(いや幻影かもしれません)背中を追っていた私には、この世界的名誉の受賞はうれしい。また、遅かれ早かれ受賞は間違いなかったが、理論物理という奇怪な分野で、日本人によって導かれた理論が、世界的に評価されたことがうれしい。理論物理学では「湯川秀樹」「朝永振一郎」以来(二人とも素粒子の分野)だけど、この先しばらく日本人がこの分野で受賞することはないだろうな・・・。

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